東京オフィス市場は近年、働き方の多様化やパンデミックの影響、経済の回復といった複数の要因により大きな変化を遂げつつある。2023年においては、東京23区の空室率が6.2%から5.1%へと大幅に低下し、なかでも主要5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の空室率は4.6%と、約5年ぶりに5%を下回る水準となった。この背景には、企業の旺盛なオフィス需要の回復が挙げられ、業容拡大や立地改善を目的とした移転・増床ニーズが注目されている 。
一方で、オフィス供給の動向にも注目が必要である。2023年から2025年にかけて、東京エリアでは再び大規模な竣工ラッシュが見込まれている。特に2023年は、過去平均の2倍に相当する19万坪の新規オフィス供給が予定されており、2025年にはグレードAビルにおいて過去最高レベルの供給が見込まれている。こうした供給増加により、企業はオフィス戦略の見直しを迫られており、さらなるテナントの移動が活発化する可能性がある。
オフィス賃料については、2018年時点でのデータに基づくと、東京全体のオールグレード賃料は対前期比+2.0%と堅調に推移していた。また、空室率は0.8%と過去最低水準を記録しており、当時も旺盛な需要が賃料の上昇を支えていた 。ただし、今後の経済不透明感やリモートワークの定着、そして大量供給などが重なることで、中長期的には賃料の下落圧力も予想されている。
全体として、東京オフィス市場は回復基調にある一方で、供給超過リスクや需要の変動といった複数の課題も抱えている。企業は今後の市場動向を見極めつつ、柔軟かつ戦略的なオフィス選定と働き方の整備が求められるだろう。